詩の世界に触れる――工藤直子『てつがくのライオン』他

詩の世界を楽しんで

シンプルな言葉だからこそ、心に響く詩の世界。

詩は、小学生のどの学年の教科書にも必ず載っていると思いますが、学校の教科書を離れた場所で向き合う機会はなかなかありませんよね。読書好きであっても、詩には興味を持たないというケースは多いと思いますし、無理やり読ませるものでもないと思っています。

 

見慣れたもの、見過ごしていたものが詩人の目線で拾われる

今回は難しい言葉ではなく、素直に綴られた詩ということで、工藤直子さんと谷川俊太郎さんの詩集を紹介します。同じものを見ていても、人それぞれ感じ方は違います。見慣れたもの、見過ごしていたものが詩人の目線で拾われ、言葉にして届けられているのが詩です。

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全部読み切るぞと構えてかかるのではなく、拾い読みでも良いと思います。静かな気持ちで自分と向き合う時間に開けば、大人も子どもも何か感じるものがあるはずです。

 

生き物・自然を見つめる目


一つ目は、工藤直子さんの『てつがくのライオン』という詩集です。今回選んだものは1982年の初版のもので、佐野洋子さんの挿絵つきということもあり、やわらかなタッチの絵が詩の鑑賞を助けてくれます。

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工藤さんの詩には生き物が数多く出てきます。豊かな感性から紡ぎだされる言葉に、どうしてこんなにも生き物たちの目線になれるのかと不思議になります。繰り返し出てくる自然の描写に浸っていると、わたしたち人間は大きな自然の中に活かされていることを実感します。

 

「夕陽のなかを走るライオン」

この詩集の中で少し変わっているのが、「夕陽のなかを走るライオン」という詩です。会話文や情景描写がふんだんに入った物語として書かれており、塾の低学年の読解テキストの素材にもなっています。

ひとりぼっちのライオンと縞馬との出会いは、動物が主人公の童話として楽しく読むこともできますし、その前に載っている表題作の「てつがくのライオン」とあわせて、この詩集の導入にしても良いのではと思います。

 

入試問題で出会った詩

中学受験という目線で言えば、例年、詩が出題される中学校もあります。今年筑波大付属駒場中の入試問題は、谷川俊太郎さんの『合唱』という詩からの出題でした。

遠くの国で物のこわれる音がして
幾千万のちりぢりの会話が
終日僕を苦しめる

このような書き出しで始まるのですが、一読してみてどのような光景を思い浮かべるでしょうか。
今、まさに世界で起きている悲しい戦争に重ねて読んだ方が多いのではないでしょうか。

 

詩の言葉の受け取り方は読み手次第

この詩は谷川さんが18歳の時に書かれたものとのこと、ちょうど朝鮮戦争が起こった年です。もう70年も前のことですが、具体的にどの戦争のことと書かれているわけではありません。

そしてこの詩を出題し、12歳の子どもたちに読ませる学校があるということ。

詩の言葉をどう受け取るかは読み手の経験、知識、想像力次第です。小学生ということで経験はまだまだ浅くとも、言葉に敏感であってほしい、一つの言葉から想像力を働かせられる人であってほしい、そんな学校の思いを感じました。
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小学生には講談社「青い鳥文庫」の『谷川俊太郎詩集 たったいま』がおすすめ

こちらの詩が載っているのは『自選 谷川俊太郎詩集 』(岩波文庫)ですが、小学生には講談社「青い鳥文庫」から出ている『谷川俊太郎詩集 たったいま』をおすすめします。

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講談社
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青い鳥文庫初の詩集として出されたもので、余白、総ルビ、めくりやすさなど手に取りやすい1冊になっています。

詩は中学受験でほとんど出ないから……と勉強面では後回しにされがちですが、言葉一つひとつの理解を深めながら鑑賞することで言葉の感覚が良くなります。ぜひ時間を取って、音読して言葉の響き、リズムなど隅々まで楽しんでほしいと思います。

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