辞典も読み物として楽しんで
今回は題名に「辞典」とある本を取り上げます。辞典というと、知らない言葉の意味を調べるものという印象が強いですよね。そして、小学生が触れるものといえば、国語辞典、そしてことわざ辞典くらいでしょうか。
それぞれの言葉に例文がついているので用法もイメージがしやすく、隅から隅まで読み込むというよりは、パラパラと雑誌をめくるような感覚で眺めるのにちょうどよいなと感じます。
感情を言語化した言葉にたくさん触れましょう
「うれしい」、「かなしい」というシンプルな気持ちを表す言葉でも、驚きを伴うようなうれしさだったり、どうしようもない状況でやるせなさを感じる悲しさだったり、と色々な表現があります。でも、日常生活で心情表現を口に出して使うこと自体があまりないですし、そもそもそういった表現に出会ったことがなければ使えるわけがありません。
言葉の引き出しに言葉を蓄える
特に子どもたちは、感情を言葉にするということに慣れていません。自分が抱えている気持ちを自覚し、なんと表現したらいいのだろうと思っても、言葉の引出しに言葉を蓄えていなければそれをアウトプットすることができませんよね。
言語化された気持ちを表す言葉、テーマごとにまとまった言葉の集まりにたくさん触れることで、まずは言葉の引出しづくりができるのではと期待します。
心情表現はプラスマイナスを意識して
私が国語のレッスンをする際には、心情表現が思い浮かばないときはプラスの気持ちかマイナスの気持ちか考えてみてね、と声掛けをすることがあります。ずらっと心情語が書かれたリストを見せながら、まずはどちらのグループかな、と考えて、ぴったりな表現を見つけてね、と話します。
この本には、言葉にまつわるコラムも載っているのですが、こちらでもプラス、マイナスという表現で気持ちが説明されていました。
これについて、「人は満足しているときよりも、不満や不安があるときのほうが、気持ちを細かく表現したくなる」と説明されているのが興味深いです。マイナスな気持ちを少しでも言語化することによって心を落ち着かせる効果があるということなのかもしれません。
知っている言葉から使える言葉へ
語彙について、日本語学者である大野晋さんの言葉を引用します。
中学受験のため、テストのため、と詰め込む語彙は、結局現実的に「使える」語彙とならないまま引き出しの奥底に詰め込まれたままになってしまうことが多いです。
生活の中で表現の仕方を考える
子どもたちにとって馴染みのない難しい言葉だらけだとは思いますが、ただ知っている言葉から使える言葉へ変えていくには、生活の中でこの気持ちはどんな言葉で表せるのかと考えることが大切だと思っています。日々の生活の中で、サッと引き出せる言葉の引き出しは多いほうがいいし、その中に色とりどりの語彙が入っていることが理想的です。
一つの感情や動作に対していろんな表現の仕方があることは、日本語の素敵なところです。この本を通して、日本語って面白いなあ、素敵な言葉をもっと使えるようになりたいなぁと刺激を受けてくれれば嬉しいです。