難しそうなテーマでも怖がらないで
今回は久しぶりに新書の本を取り上げます。新書とは新書版の大きさの本のことで、主にノンフィクションで書かれた専門分野の入門書です。書店でずらりと並んだ棚をみるとジャンルの幅広さに驚かされます。
中学入試では論説的文章の出典として使われることが多いものの、子どもたちが進んで手に取るにはテーマが難しく、このように紹介することで少しでも身近に感じてもらえればと思っています。
非科学的な思考の癖は大きな損失につながる
科学という言葉を聞くと、非常に専門的なものだから自分たちには立ち入れない領域というように思ってしまう人が多いかもしれません。
筆者は、そういった非科学的な思考の癖は人間にとって大きな損失につながる、と語ります。
「盲目的に信じる」前に立ち止まる
もちろん、非科学的なものに全く影響されない人生と言うのも味気ないものかもしれませんし、非科学的なものは思った以上に身近にあります。
筆者もこちらの存在自体を否定しているわけではないのですが、盲目的に信じてしまうような人には、一度立ち止まって考えてみるべきだと警鐘を鳴らします。
文系理系という言葉は不適切
本書では、人のタイプを分ける言葉である文系、理系という言葉も、非科学的な言葉だと書かれています。
でも、そういった人の種類を分ける言葉が、よけいに科学を遠く感じさせてしまっている感じがします。
科学的に考えることが人間の幸せにつながる
ちょうどこの本が書かれている最中に、2011年の東日本大震災が発生しました。
振り返ると、マスコミから発信される日本国内における情報の多くが、被害をドラマチックに報道し、視聴者側も感情に流されがちだったように思います。心を動かすこと自体は自然なことですが、泣いても感動してもそれだけでは被害者を救うことができません。
東日本大震災が起こってから、12年が経ちましたが、この考え方は近年のコロナ禍を経た社会の状況に重ねることもできると思います。
思い込みの判断や思考停止をしない
各章の最後には、本書のまとめという小見出しがあり、科学は好き嫌いの問題ではなく、科学をから目を背けることが人それぞれにとって不利益であることを何度も繰り返して伝え続けてくれます。
筆者曰く、科学的であるためには、思い込みの判断や思考停止をしないように考えること。それでいいのかと疑い、慎重になること。現代社会で生きていくというのは、科学と密接にかかわるということであることを忘れてはならないと気付かされます。