4年生が主人公の2冊の本
今回は2冊の本を紹介します。
中学受験の入試問題で出典となる文章は、12歳の6年生が読むものということもあり、高学年~中学生のことが多いのですが、今回の本は2冊とも主人公は4年生。
どちらの本も文字組みがゆったりとしていて、振り仮名が多めについています。また、本文中にも挿絵がふんだんにあるのも、いままでに本を読んだ経験が少ない子が一人で読み切るための助けになると思います。
「どっちでもいい」は「どうでもいい」??
かわいくおしゃれな色合い表紙の真ん中で、不安そうな困り顔をしているのがこの本の主人公、はるです。
主人公のはるが4年生になる前日からお話が始まります。
意見がまったくないわけではないのに大勢の前に出ると緊張したり、その場で答えを決められなかったりして意見を言うことができないというのは、共感する人も多いのではないでしょうか。
「いてもいなくてもどっちでもいい子」
新しいクラスがはじまり、これから友だちを作ろうというときに、中心的な存在の女の子が、自分のことを「いてもいなくてもどっちでもいい子」と言っているのを聞いて辛くなってしまいます。
幼馴染の男子の颯太にも、「どっちでもいい」って言葉はいいかげんだからとそう言っているんだと思われてしまう、と指摘され落ち込むばかりで自分を変えることができません。
心が弾む体験と「変わりたい」思い
そんな中、たまたまヒップホップのダンススクールを見学することになり、ひさしぶりに心がうきうきとはずむ体験をします。両親にダンスを習いたいと言い出すことを迷いながらも、過去の自分を思い出してぐっと心を決めます。
「今の私はなりたいわたしではないから変わりたい」と心の中でつぶやく場面は、自然と応援する気持ちにさせられます。
好きなものができると強くなれる
後半は、自分からやってみたいと始めたヒップホップのダンススクールが舞台です。そのスクールには、はるのことを「いてもいなくてもどっちでもいい子」と言った杏ちゃんが通っていました。ダンスに夢中になりながらも杏ちゃんとの関係で悩みが増えてしまうのですが、もうくよくよと落ち込んでばかりのはるではありません。気づきと成長を感じるエピソードが詰め込まれています。
想像つかないからと敬遠せずに読んでほしい
女の子同士の気持ちのぶつけ合いは、同年代の男の子にはイメージもつかないかもしれません。話の展開はわかりやすいので、女の子の話だから読みにくそう、と敬遠せずに読んでみてほしいです。好きなものに出会うこと、大切な存在ができることは人の心を強くするのだなぁと、成長を感じるすがすがしい物語です。
ためいきの中身はなんだろう
もう一つのお話も主人公は4年生。表紙を見てみると、ちょっと浮かない顔の男の子がはぁ~とためいきをついています。この、みんなから「たのちん」と呼ばれる男の子が主人公です。2022年の青少年読書感想文全国コンクール 課題図書にもなっていましたので、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
クラスで班ごとにオリジナルの図鑑をつくることになったものの、班の話し合いがまとまらず、たのちんはみんなからテーマ決めを押し付けられてしまいます。保健室登校をする同じ班の加世堂さんに、大きなためいきをつきながらその話をするたのちんに、加世堂さんがわらいながら描いてくれたのは、たのちんのためいきから生まれた「ためいきこぞう」でした。
ネガティブなものだけではない「ためいき」
家に帰ってテーマのことを必死考えるたのちんの元に、なんと紙の中から「ためいきこぞう」が現れます。ためいきというと、どうしてもゆううつなとき、いやなことがあったとき、とネガティブな印象がありますが、よく考えてみれば素敵なものを見てうっとりしたり、ほっと安心したり、嬉しさや楽しさがためいきになることもありますよね。
自分の気持ち、友だちの気持ちと向き合おう
加世堂さんが保健室で絵をいきいきと楽しそうに描いていたのを見ていたたのちんは、図鑑の絵を描いてもらおうと思いつきますが、同じ班の小雪も自分が描きたいとゆずってくれません。たのちんは、「ためいきこぞう」に助けられながら、ためいきにもいろいろな種類があることに気づき、一生懸命友だちや自分の気持ちと向き合っていきます。
等身大の言葉で悩む姿に自分を重ねて読める一冊
小学校4年生の等身大の言葉で、友だち関係に悩む姿は、読み手の子どもたちが重ねて読むのにちょうど良いはずです。以前は仲がよかったはずの小雪と加世堂さんの関係がどうしてこうなってしまったのか、なぜ加世堂さんが保健室登校をしているのか、など種明かしもあり、読後感はすっきりです。
本編の最後には、たのちんたちが作った『みんなのためいき図鑑』が少しだけ紹介されていますので楽しみに読んでみてくださいね。