スポーツが盛り上がった2023年に「スポーツの話」を読んでみよう

スポーツが盛り上がりを見せた2023年の夏

夏の風物詩ともいえる高校野球・甲子園をはじめ、今年の夏はバスケットボールやラグビーのワールドカップ、世界陸上などいろいろなスポーツで盛り上がっていました。自分自身がスポーツをやるわけではなくても、真剣勝負を観戦するのはわくわくしますよね。

押さえておきたい野球の話

今回はスポーツを取り上げた作品をいくつかご紹介しようと思います。

野球やサッカーなどの小学生になじみのあるチームスポーツは中学受験の国語の長文で題材にされることが多くありますし、野球は国民的スポーツと言われるだけあって、他のものよりも扱われる頻度も作品の数も多いように感じます。

野球に関係がない作品の中においても、「さよなら逆転ホームラン」「バッターボックスに立つ」「速攻」など、特有の言葉が比喩表現として文章に使われていることがあります。

それらの言葉について、直接的に意味を聞かれる問題というのはほとんどありませんが、言葉がわからないことで状況が読み取れなかったり、情景が頭に浮かばず読み進められなかったりと、文章の解像度が下がってしまいます。

お子さんが今までそういったスポーツの小説に無縁であったなら、ぜひ経験値の一つとして今回ご紹介する本を手に取ってみてほしいと思います。

小学生におすすめの野球の小説3選

後藤隆二『キャプテンはつらいぜ』

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講談社
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中学入試の問題としては筑波大付属駒場中や慶應湘南藤沢中で使われたことのある有名な作品です。

期せずして、万年ビリのやる気のない野球チームのキャプテンになってしまった主人公。悪戦苦闘しながらも、仲間達と一緒にチームを立て直そうと奮闘するお話です。スポーツに馴染みのない子であっても、小学校5年生という等身大の主人公がだんだんと頼もしくなっていく様子にきっと共感できるはずです。

こちらは2006年に発刊されましたが、その年度以上にノスタルジックを感じられる良さがあります。一つのことに夢中になって頑張る姿、親があまりうるさいことをいわずに子供たち中心でなんとかしようとする姿、作中に出てくる「キャプテンの心得」もチーム作りの目線としておもしろいと感じるのではないでしょうか。

あさのあつこ『バッテリー』

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KADOKAWA
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野球の小説といえば、というと思い浮かぶ人が多いのが『バッテリー』ではないでしょうか。

天才ピッチャーとして自負を持つ巧が主人公。タイトルの『バッテリー』の名前の通り、引っ越したばかりの岡山の街で出会う同級生の豪とのバッテリーを組むことに(まさにこの表現が野球独特なわけですが……)。中学野球部に入部した巧と豪はさまざまな問題に直面し、乗り越え、唯一無二のバッテリーの絆を築いていきます。

小説を元にして、漫画、映画、アニメと色々な方面に展開されていますので、小説にこだわらず、映像作品から入ってみてもよいかもしれません。

重松清『卒業ホームラン』

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短編なので、重松清さんのいくつかの短編集に登場しますが、中でも自選『卒業ホームラン』は男子が主人公のお話をまとめたものでおすすめです(すべて女の子が主人公の『まゆみのマーチ』というものもあります)。

男子が主人公と書きましたが、本作品の主人公は、息子の所属する少年野球チームの監督を務める父親です。6年生最後の試合、レギュラーになれるほど上手くない息子を試合に出すことができないのはわかっているけれど、父親として抱える思いは複雑です。父の子に対する心情の機微を、野球を通して描いた名作です。

ちなみにこちらも上2作同様、中学入試頻出の作品で過去に10校以上の学校で扱われています。

その他、絵本ナビのサイトでは、『野球、野球選手の絵本』というテーマで、絵本に限らず野球にまつわるお話がたくさん紹介されています。ぜひ参考になさってください。

本で知らなかったスポーツに詳しくなる

また、本でスポーツに出会うことで、新しい世界を知ることもあります。弓道の弓を引く際の張り詰めた空気や、陸上のような個人競技での仲間意識など、読まなければわからないことだらけです。珍しいスポーツとして、高飛び込み、スキージャンプ、自転車ロードレースを題材にしたものが取り上げられたこともあります

スキージャンプを舞台にした、乾ルカ『向かい風で飛べ!』

ここでは、乾ルカさんのスキージャンプを舞台にしたお話『向かい風で飛べ!』を紹介します。

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現在スキージャンプの世界人口は、男女合わせて約1400人、その中で女子が200人ほどと言われています。日本人に限ればもっと少ないはずです。そしてスキージャンプに限らず、ウィンタースポーツを描いた小説というのは多くありません。こういった 馴染みのないスポーツの世界の内側をだれでも覗くことができるのが読書の醍醐味です。

「向かい風は大きく飛ぶためのチャンス」

札幌から道北にある町に越して来た主人公のさつき。なかなかクラスメイトに馴染めない中、声をかけてくれた理子という少女に誘われたことがきっかけでスキージャンプを始めることになります。

ジャンプの楽しさを覚えたさつきと、小さい頃から、天才少女、将来のオリンピック選手と期待される理子。2人は同じ目標を目指す仲間でありライバルであり……お互いの存在を意識し、ジャンプを通して選手としてだけでなくひとりの人間としても成長していく姿は清々しく感じます。

「向かい風は大きく飛ぶためのチャンス」

スキージャンプに向き合う2人の背中を後押しする言葉なのですが、競技においてだけでなく人生の生き方を暗示する言葉が心に響きます。小学校高学年から中学生とは心も体も成長する時期です。思春期ならではの悩みを抱え、共に成長していく2人を追いかけてみてください。

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