大人にこそ読んでほしいメッセージ:人生の主役は自分
「君は君の人生の主役になれ」と、強いメッセージが込められた題名のこの本は、ちくまプリマ―新書というレーベルからもわかる通り、中高生向けに書かれた本です。
先日あったサピックスの模試では、この本の「勉強」に関する部分が取り上げられ、筆者の主張を読み取る問題が出題されました。
もちろん子どもが読んでも得るものは多いと思うのですが、今、子どもに関わる大人にこそ、かつては子どもだった自分を思い出しながら読んで欲しい本だと思いました。
複雑な現代社会を生き抜くために
現代の社会は昔以上に複雑です。
大人たちから投げかけられる言葉に違和感を抱きながらも、どうしたらいいかもわからず悶々としてしまう日々。中高生ってこんな悩み抱えてしまうよね、みんな通ってきた道だよ、と大人から見れば特段取り上げるほどのないことであっても、子どもの生きる小さな小さな世界の中ではとてつもなく大きなものでしょう。
例えば自分で掘り下げていく学びが面白いと言うのも大人になったからこそ思うことです。親や周りの大人たちからどんなに「勉強しなさい、将来役に立つから」と言われても、それよりも今楽しいことを優先してしまうような経験は誰しもにあるはずです。
学校のこと、親との関係、お金、勉強とバラバラに章立てされていますので、興味の向いた好きなところから読めるようになっています。主張が強い本を読むと、お説教をされているようで居心地が悪いという声を聴くことがあるのですが、筆者の考え全てに共感しなくとも良いのです。ぜひ気軽に手に取ってみてほしいと思います。
正しさばかりを求めずに
この言葉に、今自分がどれだけの世界を見ることができているのだろうと改めて考えさせられました。広い世界を見るべきと言いながら、決められた枠組みの中で、正しく、うまく生きることばかり考えていないかと。
題名にある「君は君の人生の主役になれ」の「君」は読み手であるすべての人、私たち大人も含めた応援の言葉と受け取れるのではないでしょうか。
正解を求めがちな世の中で多様性を受け入れる大人の存在
この本を読んだからといって、すっきりと全てが解決するわけではありません。ただ正しさ、正解を求めがちの世の中で、こうでもいい、ああでもいい、と強く優しいメッセージを投げかけてくれるような大人の存在は、子ども時代を振り返ったときに印象に残るものになるのではないかと思います。
『非属の才能』:中2病なんかこわくない
メッセージが強く伝わってくる本、そして中学入試つながりということで思い出すのが、2021年に開成中の入試問題の出典となった『非属の才能』です。
冒頭から、どこにも属することをしないことで得られるものがある、協調はしても同調をすべきではないといった主張が展開されます。そして、学校をはじめ、あらゆる場面で同調圧力に満ちている日本で、時代の変化に無自覚に、ただ真面目にやっているだけではいけないと警告をし、色々なエピソードを差し込みながら、「考え続けろ」「考えることを放棄するな」と語ります。
「中2男子に読ませたい!中2賞」
本書は、2011年の本屋大賞の特別賞として、「中2男子に読ませたい!中2賞」というちょっと変わった賞の受賞作としても話題になりました。
思春期真っ只中の中学2年生が自意識過剰になりがちで不安定なことを揶揄して言う「中2病」は、一般的には扱いにくく厄介なものとして見られてしまいます。しかし、筆者は、「みんなと同じは嫌だ」「どうして言われた通りにしなければいけないのか」と集団の流れに乗りたくない、乗れないような感覚、つまり「どこにも属せない感覚」の中にこそ才能が眠っているというのです。
周りに合わせられず、どこにも属せない感覚をダメなものだと思わずに、自分の思うようにやってみたらどうか、と背中を押してもらえます。
入試問題は学校からのメッセージ
入試問題は、学校からのメッセージであると言われます。こういった現代社会における問題意識を想起させる文章を読ませ、自分らしく、自分だけの人生を生きるための刺激にしてほしいという学校の思いが見えます。
ちなみに、こちらの「非属の才能」は、ネットにて全文公開しています。開成中の出典個所はP84-P88ですので、ぜひお子さんと一緒に読んでみてくださいね。
https://honsuki.jp/stand/1381/index.html