あなたはSDGsについてどのくらい理解していますか?

SDGsについてどのくらい理解していますか

今回はSDGs(持続可能な開発目標)について取り上げた児童文学作品、「おはなしSDGs」というシリーズを紹介します。

SDGs:持続可能でよりよい世界を目指す国際目標

2015年にニューヨークの国連本部で開催された世界サミットで、SDGsが世界共通の目標として掲げられてから8年が経ちました。

SDGsとは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すという国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、発展途上国、先進国の区別なく取り組む普遍的なものであり、日本でも積極的に取り組まれています。

SDGsは中学入試でも理解が必須

2020年度から実施されている新学習指導要領には、「SDGsの担い手を育てること」が明記されており、小学校の授業で必ず学習することになっています。

また、中学受験においては、「社会」の科目を学ぶ際に押さえておくべきキーワードとして取り上げられますし、実際の入試問題でも知っていることが前提の問題が多く出題されています。

テストで点をとるだけだったら、単語の丸暗記でも足りるのかもしれませんが、これからの社会を生きる子どもたちには世界が直面している問題点を知り、考えてほしいと思います。

物語を読むことで様々な問題に出会い、考えるきっかけに

しかし、「SDGsを子どもに知ってほしい」「SDGsを学ばせたい」と思っても、生活に馴染みのあるものだったらまだしも、どう伝えていけばよいかイメージが湧かないものも多くあると思います。

今回紹介するのは、世界で起きている様々な問題に物語を読むことで出会い、考えるきっかけになるシリーズです。

おはなしSDGSシリーズの魅力

色々な書き手が、SDGsの17のゴールのうちの1テーマを受けもち、1冊完結のお話を紡ぎます。各児童文学賞受賞作家やベストセラー作家など、現代を代表する一流童話作家の書き下ろし作品というわけです。

「物語の楽しさ」を第一に書かれた作品は、どの一冊をとっても、すぐれた児童小説として楽しむことができます。

数字によってもたらされる「現実のインパクト」

挿絵を描くイラストレーターも本ごとに異なり、表紙だけでもそれぞれまったく違う印象を受けます。

挿絵が多く掲載され、物語を読み通す手助けをしてくれますし、本文中に物語と関連する図表、グラフ、年表などが入っているところは、他の本にない特徴だと感じます。物語で語られた内容が、数字や図表で表されることでストーリーに説得力が生まれています。実際に数字でつきつけられる現実はインパクトがあるものです。

各巻の巻末では、テーマとしたSDGsのゴールについてくわしい解説があります。子どもたちがこの本を通して、それぞれのゴールのイメージを正しく持ち、自分事として身近なところから問題意識を持つことができればと思います。

「ジェンダー平等」を2人の目線で

17のゴールそれぞれのお話と、総集編を合わせて全18巻のシリーズとなっています。ここでは「5ジェンダー平等を実現しよう」というゴールについてのお話を紹介します。

中学受験の入試問題においても頻出作家である、戸森しるこさんの描き下ろしです。『すし屋のすてきな春原さん』という、「す」という音で韻を踏んだタイトル、表紙には柔らかいタッチでお寿司をにぎる板前さんと、それを見る2人の子どもたちがいます。

前半は父に連れられていったお寿司屋さんで女性のすし職人と出会った男の子、小林伝が語り手となり、後半の主人公は、同じクラスで寿司職人になりたい女の子、海江田美緒。二人の視点からの展開で、物語としても男女の視点を持つことができるようになっています。

子どもたちの気づきを引き出す伏線

お話の途中には日本のジェンダーギャップ指数や、職業ごとの男女差、男女間の賃金格差が載っており、日本の男女差の現実を良く表しています。

また、伝の家庭がステップファミリーであることや、学校でのあだ名による嫌がらせの経験など、ジェンダー平等以外にも子どもたちの気づきを引き出す伏線が敷かれています。

最後までぐいぐいと読ませるストーリーに散りばめられたたくさんの要素がこのお話SDGsシリーズの魅力です。SDGsとつなげられるようなニュースを見聞きした時などに、そのゴールについてのものを手に取ってみると良いのではないでしょうか。

『SDGsおはなし絵本 やさしくわかる17の目標』

「おはなしSDGsシリーズ」がまだ読み切れないような低学年の子どもであっても、お話を通して学ぶことができるのが、松葉口玲子さん監修の『SDGsおはなし絵本 やさしくわかる17の目標』です。

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SDGsを「ひと」「ゆたかさ」「地球」など独自の切り口で分け、その上で17の目標をひとつひとつお話にして紹介しています。動物を主人公にするなど、子どもたちが親しみやすいテーマと見せ方で、SDGsの17の目標をストーリー仕立てで紹介しています。

幼年童話なので全体を通してイラストが多く、幼い子どもたちであってもSDGsを難しいものと捉えずに、自分も含めて「みんなで考えなければいけないこと」と理解できればよいのかなと思います。

絵と優しい言葉で現実を分かりやすく伝えてくれる

例えば1巻におさめられた『きのみのかずは?』ではスズメを主人公に、読み書きや計算ができないとなぜ困るのか、教育を受けられない子どもたちがいるという現実を分かりやすく伝えます。

また、『もしもトイレがなかったら』 というお話はたったの6ページですが、かわいらしい絵と易しい言葉で、安心して健康にくらすためにはトイレが必要であることを説明します。

こちらもお話の後には解説ページがあり、「やってみよう」「しらべてみよう」というコーナーでは、子どもたちが自分でできるSDGsのアイディアも満載です。大人が読むことで子どもたちにどのような言葉で伝えていけばよいのか、というヒントにもなりますね。

SDGsについて学ぶことは、世界が抱える問題を理解し、世界と自分たちがつながっていることに気づかせてくれます。親子で読むことで会話を広げ、学びの入り口にしてほしいと思います。

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