塾の小窓をのぞいたら――矢野の雑記[2024年01月08日ー01月12日]

2024年1月8日(祝月)

暦の関係で昨日の冬期講習会最終日から間髪入れずに「第6期」の授業が本日より始まる。スタッフは大変だと思うが、来月2月の新年度開講は比較的ゆったりしているので、そこで存分に休んでほしい。

11:00からは月2回ペースで開催している「スタッフ会議」。この会議の大半は、コロナ禍以後ZOOMを使っておこなっている。この時期は6年生の入試対応に、新年度準備が入ってくるので何かと慌ただしい。今日は午後から2月5日より勤務する新入社員との面談と手続説明をおこなう。20代後半と若いが、経験十分で授業が上手い理系講師。一緒に働くのが楽しみである。そのあとは、自由が丘校5年生の「振替授業(国語・社会)」を担当。スタジオキャンパスは授業欠席者のための「振替授業」(前週と同じ内容の授業を半分の時間に短縮しておこなうもの)を随分前からおこなっている。もともとは授業欠席者に限定していたが、前週の授業内容の定着に不安のある子どもたちだって参加したほうがよかろうと、10年くらい前から全員に開放している(無料実施)。

夜は2月1日発売の新書の「確認校」の直し。初校、第2校と都度念入りに加筆訂正したつもりだが、バンバン赤入れしてしまう……。長い1文になってしまうと、主述関係でミスしやすい。あと、ワンセンテンスの中に「が」という助詞が2度登場するのは個人的に気持ちが悪いので、そこも訂正。そして、意外にやらかしてしまうのは、ことばの誤用。たとえば、「『微に入り細を穿つ』性質の問題が~」と記述してしまっていたが、これは「『微に入り細に入り』といった性質の問題が~」が正しい。国語講師としての不明を恥じつつ、幾つかの表現を差し替えたり、新たな表現を挿入したりする。0時を超えて、ようやく直しを終え、スキャンをとって祥伝社の編集者へメール送信。たったの2週間で見本が届くらしい。凄いスピードである(いや、お前が遅いんだろ)。

2024年1月9日(火)

午前中は髪を切りに自由が丘のKEENへ。いまは移転しているが、もともとはスタジオキャンパス自由が丘校の近隣にあった。いや、わたしたちがKEENの近隣に塾を出した、に訂正。向こうのほうがわたしたちより創業が1年早い。先輩である。KEENの創業年からわたしはここで髪を切り続けているので、かれこれもう18年になる。わたしのことを知っている人は意外に思われるかもしれないが、わたしは散髪しているときは基本的に黙っているか寝ている。こちらから注文を付けることも滅多にない。「いつもと同じで」と話して、ウトウトしている。店の顧客管理情報には「この客は押し黙っているタイプなので、あまり話しかけないように」と書かれている可能性がある。髪を切られているときに態度で、その人の本性が垣間見えるのかもしれない。そうです。わたしは自己主張のない穏やかな人間です(何のアピール!?)。

それはさておき、昼からは自由が丘校に寄る。わたしは火曜日が週休なので出社しなくてもよいが、新年度に向けた資料作成を何点かおこなう。

15:30に自由が丘校をあとにして市ヶ谷へ。今年度最後の大学院の講義に参加するためである。
わたしは現在社会人大学生として、法政大学大学院人文科学研究科国際日本学インスティテュート日本文学専攻(名称が長い……)の博士後期課程に在籍して、言語学をベースに学齢児童や日本語学習者の言語運用スキルについて研究している。大学院の授業では毎度「知らないこと」ばかりで打ちのめされそうになるが、学べば学ぶほど「知らない」ことがどんどん顕在化するもの(それまではそれを知らなかったこと自体、自覚できていなかったということ)。わたしは5年前まで通信制大学で経営学を学んでいたし、とにかくいまは学ぶことが楽しくて仕方がない(苦しいことも多いけれど)。新しい刺激を受けるというのは、明文化は難しいけれど、日々の子どもたちの指導に何かしら活かされていると思う。加えて、「若い友だち」が一気に増えた。その大半が留学生たち。彼ら彼女たちとの交流は大変面白い。

わたしは最近「ワンチャン」という表現の意味変化に興味があるのだが、本日の講義のテーマは「文法化」であり、まさにぴったり。「ワンチャン」という音韻的縮約現象が脱範疇化(「大きな文法範疇」→「中間的文法範疇」)を引き起こしていることを理解できた。さらに、「ワンチャン」は間投詞的化あるいは接続詞化になってきているようにも感じているので、論文になるかどうかは分からないけれど、まずはこの点を先行研究と突き合わせてリポートを作成してみたい。

わたしは長期履修制度(6年間)を利用して、博士後期課程で学んでいるので、しばらくは「学生」である。学割が適用されるらしいけれど、そういえばあまり使っていないなあ。もったいないことをしているのかもしれない。

社会人で大学院進学に興味を抱く人はおそらく多いだろう。この雑記では、大学院に入る経緯や、そのスケジュールや研究内容などに触れると、それを楽しみにしてくれる人がいるかもしれない。新年度は4月開講なので、キャンパスからしばらく遠ざかることになるけれど。

夜は再び自由が丘校へ。

2024年1月10日(水)

早起き。何と明け方の5時である。
仕度を整えて、息子に付き添い、まだ暗い外へ。分かっていたけれど、猛烈に寒い。
そう、今日は息子の埼玉県の某私立中学校の入試、初戦である。
いよいよ矢野家最後の中学入試が幕を開けた。
もちろんわが家だけでなく、中学受験生の相当数が本日初戦を迎えるのだろう。

大崎駅まで移動し、そこから湘南新宿ライン(宇都宮行)に乗る。グリーン車に乗り込んだが、既に満席。しかし、運の良いことに渋谷駅で眼前のサラリーマン2名が降りたため、そこからは息子と揃って座ることができた。途中の駅から中学受験生がどんどん乗り込んでくる。息子の表情がやや緊張しているように見える。こういう緊張感を含めて1月に味わっておくのも意味があると考えている。

それにしても、某私立中学校までの道のりの中学受験生とその保護者の多さにはびっくりした。4年前までは「入試応援」でこの学校に来ることが多かったけれど、かなり早い時間に集合していたため、この様子は分かっていなかった。息子は塾の先生方からZOOMを通じて励ましの言葉を受け、また、わたしは手軽にリラックスする方法のアドバイスをして、送り出す。校舎に向かって消えていく背中。この光景って、中学受験の図式を凝縮しているように感じている。

試験が終わるまでの3時間半、どこで時間を潰そうか悩んでいたが、近隣に住む秋田洋和先生が車で迎えに来てくれ、わたしと同い年の息子さんがこの学校を受験しているライターのAさんと一緒に乗り込んで、宮原のデニーズへ。秋田先生のご配慮は大変有難い。秋田先生は『高校への数学』の常任執筆者で、何冊もの書籍も刊行されている方。お子さんたちは社会へ巣立っていったというベテランのパパさんでもある。わたしが28歳で早稲田アカデミーExiV渋谷校の校長に就いたとき、社命により「開成高校実績戦略」を牽引するために、他塾から引き抜かれてきたベテランの講師。ここでのさまざまな出来事はいつかどこかで書くような気がしている。

その秋田先生とライターのAさんと一緒に、最近の中学受験模様や新たなビジネスプランなどについて、モーニングメニューを頂戴しつつ、多岐に亘る話をする。

お昼が近づいてきたら、息子を試験会場にまで迎えに行く。体育館で保護者は待機するのだが、改めてその人数の多さに目を奪われる。

試験終了後の息子を無事ピックアップし、帰りはAさんとその息子さんと4名で東大宮の寿司屋でランチ。暗黙の了解的な感じで、子どもたちは互いに試験の出来不出来については言葉少なめ。まあ、入試問題は回収されてしまうし、各科目の正確な分析など難しいだろう。そんな分析をしたところで、終わったあとだし、そんなに意味があると思えない(問題があれば復習できるのだけど)。

ちなみに、息子の合否結果についてはこちらで報告するつもりはないので悪しからず。金を出すのは親だけれど、中学受験の主役はわが子。主役の個人情報を脇役が勝手に垂れ流すのは「越権行為」だとわたしは思っている。

東京へと戻って息子を妻に引き渡して、すぐに出社。
メールをチェックすると、新刊の完成書影が送られてきている。こんなふうに近刊発売の時期が近づいてくると、ドキドキするしワクワクする。

19:00からは不二聖心女子学院の広報の先生と、高校3年生の生徒(スタジオキャンパスの卒塾生)にオンライン取材。昨年秋に来訪した金沢学院大学附属とあわせて、中高生の寮生活の経験が子どもたちの成長にどのような影響を及ぼすのかを記事化したい。良い話がたくさん聞けた。あとは魅力ある素材をいかに「調理」するか。腕の見せ所である。

しかし、眠くてつらい。今日は早めに帰宅しよう。

2024年1月11日(木)

昨日の息子の埼玉県の私学入試へ付き添ったためか、朝から倦怠感。今日はちょっとのんびりして午後から三田校へ出社。授業を2コマ担当する。そういえば、授業中、廊下の机の前に新しく入社したばかりの橘先生がせっせと問題を解いている。何をしているのだろうと声をかけると、ベテラン講師の授業が漏れてくる位置にスタンバイし、その声を聞きながら一緒に問題を解いているのだという。こういう向上心のある人は一気に指導スキルが伸びるはず。期待しています。

メールをチェックしたら、祥伝社の木村さんより「本日より近刊のAmazonの予約受付が始まった」という連絡が。売れておくれ(毎度思っていること)。

夜に三田校から自由が丘校へ移動。雑務を幾つか片づける。23:00頃に退社。自由が丘校の山本(芳)先生と軽く食事する。

2024年1月12日(金)

今日は午前中に証券会社と「保険」の打ち合わせ。この年齢になると幾つものリスクを考えないと。

お昼からはスクールFC代表の松島和浩先生と3月3日(日)に開催する「第2回中学受験研究会」のオンラインでの打ち合わせ。第1回目は昨年6月にスタジオキャンパス自由が丘校にて開催。前半は文科会。算数は田園調布学園の細野先生、本郷中学校の石糀先生、国語は広尾学園の岸田先生をお招きし、自校入試問題を解説してくださったあとは、参加した学校教員・塾講師・家庭教師たちとの意見交換をおこなう。後半は、應修会塾長の茂山先生、希学園首都圏学園長の山﨑先生、スクールFC代表の松島先生による講演会を開催し、大変に盛り上がった。第2回目も今回と同じような構成で考えているが、文科会は4科目に分け、後半の講演会はトークセッションを盛り込む予定であり、規模も少し大きくするつもりである。今回の会場はスクールFCお茶の水校、ならびに秋葉原の会議室。夜は希望者による懇親会もおこなう。楽しみ。詳細が決まり次第、申込フォームを近日設置するつもり。この会の合言葉は「『現場』から中学受験を考える」。さまざまな現場から見た中学受験を横断的に分析、その理解を深めることで、互いの知見を深め、指導レベルを研鑽する機会にすること。また、意欲と熱意のある参加者同士がこれを機会にその交流を活性化すること。この2点を狙いとしている。

午後はこの「中学受験研究会」の資料案の修正、6年生の塾生たちに入試間際にプレゼントするグッズの制作について業者とメールでやり取り、「Kids-CAMPUS」の案内作成などをおこなう。

夜に1月10日の栄東の入試問題が手に入った。相変わらず面白い言語知識問題を出題している。わたしは昨年9月に『わが子に「ヤバい」と言わせない親の語彙力』(KADOKAWA)という中学入試の言語知識問題を多く盛り込んだ単行本を刊行した。3日前に担当編集者であるKADOKAWAの駒木さんから連絡を頂戴し、この本の出荷がかなり好調であり、オンライン記事の原稿を書いてセールスにつなげたいという相談があったばかり。お、この栄東の問題は使えそうだな、と考えて執筆開始。1時間足らずで約3000字の原稿が完成した(このように「素材」があれば、書くのは速い。取材したり、イチから考えたりすると相当な時間を費やしてしまう……)。その原稿をすぐにメール送信して、今日の仕事はおしまい。

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