10代が新しい「学び」を楽しむために
今回は、中学生を対象とした学習入門シリーズ『岩波ジュニアスタートブックス』、通称"ジュニスタ"を紹介します。
2021年の創刊で、本の大きさは岩波ジュニア新書より少し大きいB6判です。
子どもたちが手に取りやすいようにと製本にも工夫がされていて、本自体がとても軽く、ページを大きく開きやすくなっています。「10代以上すべての人に」「新しい学びを楽しむ」というコンセプトで、2023年12月現在、24冊の本が色々な切り口で刊行されています。
様々な切り口で興味・関心を広げるシリーズ
例えば、世の中にあふれる正解のない問いについて考えるには、こちらの本がお勧めです。
近藤雄生『10代のうちに考えておきたい「なぜ?」「どうして?」』
優しく、伝わりやすい言葉で書かれており、書かれた回答を正解としてインプットすることを目的にせず、問いを持つこと、自ら考えることの大切さを教えられます。
専門的な分野やテーマにぐっと踏み込んだ本も多くあります。
増田隆一『はじめての動物地理学』
俳句や短歌、妖怪、三国志、地図を描くことまで、「こんな世界覗いたことない!」「考えたこともなかった!」というものに出会えたらわくわくすると思いますし、もともと興味があったものが掘り下げられる楽しさに気づくこともあると思います。
読んで知識を得るだけでなく、それぞれの本に、その先の学びや探究に導く仕掛けがされています。
桝太一『なぜ私たちは理系を選んだのか』
たくさんの本の中で、これから中学生になる子どもたちに勧めたいと思ったのが、元日本テレビの人気アナウンサーである桝太一さんの書かれた1冊です。
桝さんが、大学で理系分野を学んだ上で、現在は様々な分野で活躍している7人の方々にお話を聞く、というインタビュー形式となっています。桝さん自身が、麻布中学・高等学校を経て東大理科二類に進学され、同大学院を修了されているのですが、アナウンサー歴がだいぶ長くなってきても「理系の大学院まででたのに、なんでアナウンサーになったの?」と聞かれることに疑問を感じての企画だそうです。
たしかに一般的には、理系の人は理系の仕事に就くのが当たり前と思ってしまうところがありますよね。
可能性を広げるための良い刺激に
まだ小学生の子どもたちには、文系、理系という区分け自体もイメージがつかないかもしれませんが、こんな道もある、あんな選択肢もある、と可能性を広げるための良い刺激になればと紹介しました。
あとがきまで含めても118ページのコンパクトな本ですが、きっと読み終えたときには、これから中学でどんな勉強をするのかな、理系って難しいイメージだったけど面白そうだな、などと思考が広がること間違いなしです。
「巡り合わせ」を次のステップへつなげていく
この本に登場する7名の方々に共通しているのは、大学で学ぶこととして「受験のときに理系を選んだ」ということ。本の中には、いくつも「巡り合わせ」という言葉が出てきます。
たまたまだれかに勧められたからそうしてみた、ちょっとした失敗をしたからそうせざるを得なかった、など、一見流されているようにも見えるのですが、一つ一つの出来事を受け止め、次のステップへとつなげていくさまに良い刺激を受けるはずです。
進路選択のヒントが詰まっています
そして、それぞれの章の最後には、「桝の目」というコーナーが設けられ、インタビュー内容をより深く受け止められるように桝さん目線でのまとめと考察が書かれています。あとがきでは、本のタイトルにもある<理>のチカラについて、そして、この先にはこの道しかないと狭めないでほしい、と語ります。
大人になっても学ぶことをやめず、新しいことへ挑戦し続ける桝さんからの、進路選択へのヒントがぎゅっと詰まった1冊です。