2月に入り、塾としては新年度が始まりました。
6年生になると、社会では「公民分野」の学習が始まります。
「社会科」は「社会、つまり世の中のこと」を学ぶ科目ですが、まさに公民分野はこれに当てはまる学習内容です。
中学入試の社会では「当事者意識」が求められる傾向がある
近年の中学入試の社会科においては「当事者意識」が求められる傾向にあり、自分が社会の担い手の一人であることを意識して、世の中の出来事や状態にどう向き合っているかを考えさせる出題が見られるようになりました。
例えば、以下のような問題に対して、みなさんはどのように考えますか。
今年2月におこなわれた入試問題から紹介します。
生成AIについての当事者意識:鷗友学園女子中学校
2024年2月1日「鷗友学園女子中学校」の問題です。
下線部(g)について。ChatGPTなどに代表される生成AIについて述べた文章を読んで、以下の問いに答えなさい。
ChatGPTは、知りたい内容を指示文として入力すれば、 瞬時に会話形式で回答してくれるものです。膨大な情報を学習させることで回答が作成されていくため、生成AIといわれています。
生成AIは、人間による調整や判断なしに、インターネット上にアップロードされているあらゆる文章データを学習していきます。知りたい内容が指示文として入力されると、膨大な情報から言葉を選び、その言葉の後にはどんな言葉が続く確率が高いかを判断して、自然な文を作って出力する仕組みになっています。例えば、「犬も歩けば」に続く単語には「旅に出る」よりも「棒にあたる」の方が確率が高いと判断して、回答文をつくっていきます。つまり、生成AI自体は、文章の意味を理解して回答文を作成しているわけではありません。
AIが作成する回答は、AIが学習するデータの情報量や情報の質に影響されるため、生成AIの回答には問題があるとも考えられています。
生成AIは便利なツールですが、問題点などを理解しておくことが大切です。
生成AIには、どのような問題があると考えられているか、下線部の内容に着目して説明しなさい。その上で、指摘した問題に対して、生成AIを利用する人はどのようなことに気を付けていく必要があるか答えなさい。
いかがですか。試験会場で制限時間を気にしながら答える問題としては、難度が高いと言えるでしょう。しかし、日頃から問題意識をもって少しでも考えたことがあれば、解答の手がかりを早くつかめたかもしれません(解答例は最後に紹介します)。
インクルーシブ公園についての当事者意識:普連土学園中学校
もう一問、別の学校の問題も紹介しましょう。
2024年2月1日「普連土学園中学校」の問題です。
こちらは、最初の問題よりも身近に感じられるのではないですか。一度は目にしたこともある公園のすべり台ですね。
知識として「インクルーシブ公園」という名称を知らなくても、写真をヒントにすれば何とか自分なりの解答を導くことができるでしょう。しかし、日常生活のなかで、なぜこうしたすべり台に変わったのかと考えてみる、疑問を持ってみることがあれば焦らずに試験に対処できると思います。
ちなみに、我が家の近所にある公園でも同じようにすべり台が変えられて、「インクルーシブ公園」になりました。4歳の娘にとっては、刺激が弱くなったのでたいそう御不満の様子でしたが……(笑)。
暗記「だけ」では太刀打ちできない
一般的に、社会は「暗記科目」だから前に知識を詰め込めば間に合うという考えがあるようですが、それではこのような問題に対処することが難しいでしょう。もちろん、学校によって入試問題は異なります。そしていまでも確かに覚えるべきこと、知識は充分に必要であり、そういった意味では暗記も大切です。
しかし、当事者意識をもつことは、学習内容が「自分ごと」になることでもあり、単なる机上の勉強ではなく意味を感じられるようになるでしょう。そうすれば、勉強もより楽しくなるかも…?
世の中の出来事に「なぜ」という疑問を持つ
是非、身近なこと、世の中の出来事に目を向け、「なぜ」という疑問を持ってみることをおススメします。そこから興味関心の幅が広がるかもしれませんね。
国会議員のみなさんが何をしているのか、気になりませんか?
記事内で紹介した入試問題の解答例
鷗友学園女子
差別や偏見を含む内容が大量に入力された場合、それを反映した回答が生成されてしまうという問題がある。生成AIを利用する人は、自分でも調べたり確認したりして、生成AIの回答だけが正しいと思いこまないように気を付ける必要がある。
普連土学園
すべり台の傾斜をゆるやかにする、地面からの高さを低くするなど、遊具を遊びやすくして分け隔てなく多くの人が楽しめる公園。