書店で夏のブックフェアを楽しもう
今の時期に書店を訪れると、いろいろな出版社の夏のブックフェアが開催され、対象の本がずらりと並んでいるのを見かけます。新しい本ばかりではなく、昔からの名作も多く入っていますし、その年ごとの限定仕様のカバーがおしゃれで素敵です。自分が読んだことがある本に出会い直すのも嬉しく、毎年楽しみにしています。
角川文庫、新潮文庫、集英社文庫のブックフェア
今回は角川文庫、新潮文庫、集英社文庫と、3つの出版社が展開するブックフェアの中から、小学生の子どもたちに触れて欲しい本を1冊ずつ取り上げました。それぞれ、本の紹介が載った小冊子も用意されており、親子でこちらを眺めてから書店を訪れるのも良いかもしれません。
購入すると可愛らしいしおりがもらえたり、期間限定の抽選に参加できたりと特典もついています。インターネットを通してお手軽に手に入れることもできますが、ぜひ書店へ足を運んで本を手に取り、装丁やボリューム、文体の雰囲気を感じながら、選ぶ楽しみを味わってみてください。
偶然の良き本との出会いはもちろん嬉しいものですが、他者から勧められることで普段選ばないジャンルの本に触れることもあり、新しい楽しみを見つけられることと思います。
角川文庫 カドイカさんとひらけば夏休みフェア
角川文庫では、こんなサブタイトルとともに「はじめての扉」「ミステリの扉」「名作の扉」など5つの切り口で本が紹介されています。小冊子には、受賞作や読書感想文におすすめ、など、本ごとの凡例が記されていて選ぶ際の参考になります。
森絵都 『宇宙のみなしご』
中学2年生の陽子と一つ歳下の弟リンの姉弟の物語。真夜中の屋根のぼりという2人の秘密の遊びは言葉だけでもわくわくします。日常の中の非日常を瑞々しく描いた、森絵都さんの初期の作品です。活字が大き目で行間をゆったりとった「大活字で読める文庫」のシリーズとして紹介されています。読み切れるボリュームもおすすめの理由もの一つです。
新潮文庫 新潮文庫の100冊 この夏の感情はいちどきり。
新潮文庫では、「新潮文庫の100冊」と冠して、この夏にかけがえのない1冊と出会えますように、と100冊の文庫本が選書されています。「愛する本」「しびれる本」「ヤバイ本」とキャッチ―な言葉が並び、出版社によるテーマ、切り口の違いを比べてみるのも楽しいです。
加藤シゲアキ 『オルタネート』
集英社文庫 ナツイチ2024 言葉のかげで、ひとやすみ。
集英社文庫のフェアは「どんな場所でも、どんな天気でも本は読めるから」と、「よまにゃ」と呼ばれるネコが本の案内をしてくれます。ベストセラーの作品や、読もうかどうしようか迷っていた作品も、文庫化されて持ち歩きやすいサイズになっていると気軽に手に取れますね。
伊坂幸太郎『逆ソクラテス』
以前、短編小説として紹介したこともある作品で、5編からなるオムニバス形式です。表題作『逆ソクラテス』は小学6年生の男の子が主人公で、野球を題材にしているので読みやすさも保証します。伊坂さん独特のテンポを楽しめる読後感爽快な物語です。
学校のブックリストもぜひ参考に
こういったブックフェアに限らず、学校から配られるブックリストもぜひ活用してください。もしブックリストがないときには、図書館にいる司書の先生におすすめを尋ねてみるときっと思いがけない本に出会えるはずです。
ブックリストに「建学の精神」が表れていることも
仕事柄、私立の学校のブックリストを拝見することがありますが、私学にはそれぞれに建学の精神があり、各学校の先生方が選んだ本が並ぶブックリストには、その色が濃く現れていると感じます。
中学受験のために学校見学に訪れる際には、図書室に並べられた本にも注目してみると、学校のカラーの違いを感じることができると思います。
『ナルニア国物語』
たとえば、幼稚園や小学校からキリスト教教育を行っている学校のブックリストによく入っているのが『ナルニア国物語』シリーズです。
著者のC・S・ルイスは、作家であると同時にキリスト教弁証家でもありました。当然、お話の中には異世界の醸し出す雰囲気と共に、神話的な要素もあり、絵やストーリーの中でそういった文化、宗教を感じ取ることができます。
縁がなかった分野の本に触れ、豊かな感性を育む良い刺激を受ける
また、小中高とつながる一貫教育の中で、自然との共存、体験型の学びを重視するような学校のブックリストには、自然科学の分野の知識や興味を掘り下げ、深める本が数多く入っていることがあります。元々の興味のあるなしに関わらず、自分とは今まで縁がなかった分野の本に触れる事は、豊かな感性を育む良い刺激にもなります。
子どもたちには、「自分の好きなことを追求してほしい」 「夢中になれることを見つけてほしい」と願いますが、そもそも子どもの世界は元々そう広くはありません。そして、出会ったものの中からしか選ぶことはできませんから、周りにいる大人が、子どもにとって見える世界を広げてあげてほしいと思います。