「地政学」の入門書
フランス・パリでオリンピックが始まりました。各スポーツ、選手たちの活躍に日々元気をもらいますね。今年の参加国は200を上回り、オリンピック、パラリンピックが行われる間は、普段は意識しなかったような国の名前を目にすることが多くなります。
今回紹介する本は、『こども地政学 なぜ地政学が必要なのかがわかる本』という、地政学という学問についての入門書です。
地政学とは「地理的な位置・環境や歴史が、国々の関係にどんな影響があるのかを考える学問」
地政学とは……
各国の情勢や国同士の関係をわかっているつもりでも、子どもに聞かれたときに上手く答えられない、そんな保護者の方も多いのではないでしょうか。
毎日のように流れてくる世界のニュースをどう受け止めればよいのか、これからの世界の中で日本はどのような立場でどう関わっていくのかなど、本を通して他の国々との関係を考える良い機会になると思います。
新しい学びは知るところから
地政学における絶対に知っておくべきキーワードが紹介されている章があります。そこで初めに取り上げられるのが、「ランドパワー」「シーパワー」という言葉です。
国は、今の場所の都合が悪いからといって引っ越すことはできません。もちろんどこか他の国と場所の交換をするということもできません。地理的な位置関係が、国同士の力関係を考える際に重要な条件になってくるのです。
「その学問特有の言葉」をおさえることで学びが深まりやすくなる
前述の「ランドパワー」「シーパワー」のような専門用語は、その学問を学ぶ際の共通言語となる言葉です。
地政学に限らず、その学問特有の言葉をおさえることで学びが深まりやすくなります。この本に出てくる主要なキーワードを知るだけでも、いつも見聞きするニュースがよりわかりやすく感じるかもしれません。
世界の事情を掘り下げるきっかけに
どうして望まれない争いごとが起こってしまうのか、「みんな仲良く」が理想的なはずなのに現実は難しいのはなぜなのか。この本を読み進めるうちにだんだんと「世界の事情」が見えてきます。
2020年2月、ウクライナへのロシア侵攻があり、「戦争」という言葉を非常に近く感じるようになりました。子どもたちからは 「どうして平和が大事だと言っているのに戦争するの?」 「ウクライナとロシア、どっちが悪いの??」というような疑問の声が挙がりました。
中学受験の社会科学習と「地政学」
中学受験の社会の学習においても、高学年になると日本と他の国々の関係について触れることがあります。しかし、限られた授業時間の中ということもあり、未だに解決していない北方領土問題、尖閣諸島や竹島などの問題はあくまでも課題があるということを確認するにとどまります。
国同士の問題解決に関して様々な立場からの見方を調べてみる
例えば竹島に関して、日本は平和的にこの問題の解決を図るために、国際司法裁判所に判断を任せることを提案していますが、なかなかそれがうまくいっていない現状があります。
うまくいっていないと一言で片付けるのではなく、どうしてなのかな、韓国の主張はどのようなものなのかな、と自国だけではない色々な立場からの見方を調べてみることも大切なことです。
知るだけでなく、考えてみよう
各見開きページの右下には、そのテーマごとにいくつかの問いかけが並ぶ「考えてみよう」というコーナーが設けられています。
「お金持ちの国がお金の力を使うことをどう思う?」
「日本が攻撃されないようにするためには、どうすればいいだろう?」
子どもたちに親しみやすい事例と重ねながら、様々な問いかけがなされますが、この問いに模範解答は与えられていません。思考を深めるきっかけと捉え、この夏休みに親子で掘り下げてみてはいかがでしょうか。
国際社会を学ぶ大人の課題図書
地政学にもし興味を持ち、もっと広げてみてみたいという方には、今の世界の情勢を取り上げた国際社会についての入門書を紹介します。
馬屋原吉博『今さら聞けない! 国際社会の基本が2時間で全部頭に入る』
「今さら聞けない!」シリーズの第5作目で、国同士の関係だけでなく、企業やNGO、そういった組織も複雑に絡み合う国際社会において、自分事としていろいろなニュースを捉えられるようになるための助けの1冊です。1テーマごとに見開きで内容が完結しているのも嬉しいポイントです。
こちらは内容的に中学受験と直結するわけではありませんし、ルビが多くふられていないので、大人の課題図書というイメージです。それでも紹介した『こども地政学』の本で国際関係に興味を持った子供たちはきっと夢中で読むことと思います。地政学の本とあわせて手に取ってみてくださいね。