エピソードに載せてやわらかく子どもに伝える「他者理解」

2024年8月の新刊 『みおちゃんも猫好きだよね?』

今回は神戸遥真さんの8月末に出版されたばかりの新刊をご紹介します。

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『みおちゃんも猫好きだよね?』というタイトルに合わせたカラフルな表紙には、かわいらしい女の子たちと猫の姿が。

非の打ち所がないような女の子が抱える重度のアレルギー

小学校6年生の新学期、主人公のあかのクラスに、みおちゃんという素敵な女の子が転校してきます。とってもかわいくて、頑張り屋さんで器用で、朱梨からみたら非の打ち所がないような女の子です。

みおちゃんはクラスの女の子たちともすぐに打ち解けて仲良くなりますが、みんなの行きつけの猫のいる雑貨屋さん「ミネット」に立ちよったところ、咳が止まらなくなってしまいます。そう、みおちゃんは重度の猫アレルギーだったのです。

中学年の子どもたちに背伸びして読んでほしい物語

「目に見えるものだけがすべてじゃない。
完ぺきに見えるあの子も、いつも元気なあの子も
みんなとちがうことを、ひみつにしたい気持ちをかかえている。」

みんなに気をつかわれたくないからとアレルギーであることを隠そうとするみおちゃんですが、そんなみおちゃんの秘密を知ってしまった朱梨はどうしたらいいかな、何をしてあげられるかなと悩みます。

でもそんな朱梨の気持ちとは裏腹に、クラスでは雑貨屋さん「ミネット」でみおちゃんのお誕生会を開こうという話がどんどんすすみ……後半では友人グループの分裂や女の子のグループでありがちなもめごとが起こる様子もあり、読み応えがあります。

説教臭くならない筆致が繰り出す読み応え

そして各章で取り上げるテーマは考えさせられるものであっても、お説教臭くならないのは作者の神戸さんの筆致のおかげ。

子どもたちのやり取りはいきいきとしていて等身大の子どもらしさがありますし、本のつくりも、大き目の文字やルビで読みやすく、たくさんの挿絵がお話を優しくリードしてくれます。

中学年の子どもたちが読める高学年の主人公のお話

自分と同い年の主人公の物語は、自分だったらと置き換えて想像しやすいものですが、学生時代の年の差は大きく感じるもの。中学年の子どもたちが読める高学年の主人公のお話として、たくさんの子どもたちに届いてほしいと思います。

まずは知ること、そして考えること

みおちゃんの猫アレルギーの他にも、各章で色覚障害、ヘルプマークなど人から見えづらい困難が取り上げられているのですが、日々の生活の中でこれらを自然と知る機会はなかなか訪れないもの。

作品中で出てくるユニバーサルデザインやその一例であるピクトグラムに初めて出会う子もいるかもしれません。ピクトグラムについては、エレベーターや非常口のマークとあわせて、東京オリンピックの開会式のパフォーマンスが紹介されています。

意識をしていないとなかなか目に入ってこないかもしれませんが、家の中のような身近な場所にもある「配慮」のマークを探してみるのも良いですね。

ちがうということを知ってるだけでもいい

物語の後半で朱梨が、クラスメイトの志倉さんと初めて向き合う場面があります。

それまではクラスの中で強い立場にいて、なんでもはっきりと口に出す彼女を苦手に感じていたのですが、「正しい」ことをやっているはずなのにうまくいかない、と、もどかしさを打ち明けられて印象が変わります。

志倉さんに対して、「正しい」ことも人によって違うのでは、と勇気をもって伝え、答えがわからないようなときでも、それぞれに「ちがうってことを、知っているだけでもいいのかも」と気づく場面は朱梨の大きな成長を感じるシーンです。

親子で話し合うきっかけづくりにも

本作で朱梨は、みおちゃんの猫アレルギーをきっかけに視野が広がり、色々な気づきを経て「配慮」という言葉に出会います。

朱梨の視点を通して、そんな事情に気づいたときにはどうしたらいいかな、必要な配慮ってどういうものがあるだろう、と親子で話しあうきっかけにもなりますね。

多様性を認めること、他者理解の必要性などを、今の世の中に求められることとして大人が言葉で語るのは簡単ですが、子どもたちにはこのような本のエピソードにのせてやわらかく届けてあげたいなと思います。

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