一度嫌いになった「歴史」を面白く感じるきっかけになる一冊

歴史に興味がない子にこそおすすめ

今回紹介するのは、日本の歴史の中の戦国時代の部分だけを取り上げた1冊です。

「頭の中に入らない」歴史の学習

多くの中学受験塾では5年生の中頃から歴史の学習が始まります。もともと歴史が好きで楽しみにしていた子にとっては待ちに待った時間となるのですが、子どもたちの中には歴史にまったく興味がわかないという子も少なくありません。

歴史が好きではないという子にその理由を聞いてみると、人の名前が多すぎる、読めない漢字ばかり、わからない言葉がたくさん出てくる、文字からイメージを想像できない、など様々です。

1度の授業で100年近くの長い期間を扱うこともありますから、頭の中に入らないと嘆く声もよく聞きます。

一度嫌いになった「歴史」を面白く感じるきっかけに

そして、一度嫌だなと思ったものはなかなか好きになることが難しいですよね。もし歴史漫画があったとしても、覚えなければならないものとして与えられているので、自分から手に取っておもしろいと思える子は少なそうです。
そんな子どもたちにこそ、こちらの本を通して「歴史って意外とおもしろいかもしれない」と思える経験をしてほしいと思います。きっと今までと違った見方で歴史上の出来事に向き合えるのではないでしょうか。

まるで動画の書き起こし、テンポの良さでどんどん読める

著者の房野さんは、お笑いコンビ「ブロードキャスト‼」の突っ込み担当で、無類の戦国武将好きとのこと。

内容は戦国時代のはじまりから、関ヶ原の戦いまでをコミカルに解説したもので、歴史の学習を解像度高く進めるためのトリビアの宝庫です。房野さんが、「歴史が好き、戦国武将が好き」という気持ち溢れるままに書いた熱量を感じます。

有名な戦国武将ほど、掘り下げてみると世の中で持たれているイメージと違ったり、そんな裏話があったのかと感心したり、芸人さんだからこその語りかけの口もテンポよく、まるで動画を見ているようななめらかさで進みます。

物事を掘り下げる楽しさを

本書で取り上げられる戦いの基準は試験に出やすいかどうかではありません。
あくまでも著者の房野さんがこれは面白い、これは好きと思ったものが並んでいます。もちろんその選出にも訳があって、この戦いのことがわかっていると、次のこの戦いの全容が掴みやすくなるなど、年表に並ぶ言葉だけではわからないドラマが隠れている面白さがあります。

徳川家康と武田信玄の人間模様が描かれる「三方原の戦い」

例えば、桶狭間の戦いの後に起こった「三方ヶ原の戦い」について、どれだけご存じでしょうか。正直この1回きりの戦いで歴史が大きく動いたとは言いにくい、そんな扱いをされる戦いの1つですが、徳川家康と武田信玄という誰もが知っている有名な武将の2人の激突、人間模様がたっぷりと書かれています。

史実として明らかになっていないこと

また、「本能寺の変」がなぜ起きたか、など今日まで判明していないことも多く、この本では史実として明らかなになってないものについては、はっきりと「詳しく分かっていない」と記されています。もしも、その先をもっと知りたいなと思ったら、その気持ちを大事にしてどんどん掘り下げてみてくださいね。

歴史はこれからのあなたのためにある

「意味もわからず覚えた100個の歴史用語より、
意味を深く理解した1個の歴史ストーリーの方が大切です。」

一つ一つの「戦」を、解像度を上げてみてみると、人間関係の築き方も戦術もそれぞれ。房野さんは、「戦いの勝ち方からも負け方からも学べることがたくさんある」と語ります。各章の最後に出てくる、筆者独自の考察を読みながら、今の世の中だったらどうなるかな、と当てはめてみるのも楽しいと思います。

探求心の切り口を与えてくれる一冊です

あとがきには、「あなたの“これから”のために歴史はあります」という言葉があります。いろいろな歴史上の出来事に「なんで起こったの?」「どうしてそうしたの?」をぶつけていくとキリがありませんが、それこそ本の中での自由な学びの世界。そんな探求心の切り口を与えてくれる本でもあります。

ドラマチックに描かれる人間味あふれる戦国武将たちに元気をもらえるのではないでしょうか。

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