「一往復半」でアクティブ・ラーニング【清水章弘・学びの旅】

皆さん、こんにちは。教育アドバイザーの清水章弘です。この連載では、私が全国をまわりながらみてきた教育現場の風景を、勉強アドバイスとともにお届けします。

新しい教育を示すキーワード「アクティブラーニング」

「アクティブ・ラーニング」。よく耳にする言葉です。新しい教育を示すキーワード。

その「アクティブ・ラーニング」の説明として使われるのが「主体的・対話的で深い学び」という表現。ざっくりと説明すれば、自分の頭で考え、他者と対話しながら、深く学んでいくということです。

たしかに必要ですね。中学受験に限らず、社会に出てからも大切な力です。

ただ、これをどう実現するのか。なかなか難しい。「主体的に考えなさい!」と言われても主体的になりませんし、対話すれば深い学びになる、というわけでもありません。

でも、私!見つけました。要約力を鍛える学校を。それも、生活の中で。

能登半島・石川県羽咋市で見た「一往復半」の取り組み

その小中学校は、能登半島・石川県羽咋(はくい)市にあります。先日、「勉強のやり方」の講演会でお邪魔してきました。衝撃の瞬間は、講演会の終盤。質問コーナーでした。

「清水先生に質問ありますか?」と投げかける教頭先生。生徒さん達が元気よく「ハイ!」と手を挙げ、いつも勉強で困っていることを相談してくれました。

驚いたのは、僕が質問に答えた直後。もう一度マイクを生徒さんが手にし、「私はいま効率的な暗記のやり方を教えてもらったので、次のテスト勉強に生かしてみたいと思います。今日、家に帰ったら、さっそく実践してみます」のように話したのです。

「ほー、面白い! 僕の回答をふまえて、感想や意見を言ってくれるのね」

面白い子だなぁ、自己主張が強めなのかなぁ……と思いながら、次の子の質問へ。そしたら僕の回答後に、またまた「僕が学んだことは、ノートのとり方です。いままで僕はノートをとるとき……」と感想や意見。

「え?」なにかおかしい。僕は講演後、校長先生に聞きました。すると、この地域の小中学校が、全校で取り組んでいる習慣とのこと。名前は「一往復半」。

「わかったつもり」を防ぐ「主体的・対話的で深い学び」を促す習慣

説明しましょう。まず、相手に質問をしたら、片道。すると、相手から返事がきます。これで一往復。でも、それで終わらせるのではなく、相手の返答を踏まえて自分が考えたことを述べる。これで合計「一往復半」ということなのです。

なんと、びっくり。こんな公立小中学校があるのか。僕は日本全国の学校をまわっていますが、まだまだ知らないことだらけだ。胸が躍りました。

人が誰か(先生など)に質問をし、返事をもらった時、聞くだけで「わかったつもり」になりがち。先生に「わかりましたか?」なんて言われれば、わかってなくても「はい!」なんて答えてしまう。でも、先生からの返答を踏まえて、感想や意見を述べる仕組みがあったら……。はい、相手の話を、とにかく注意深く聞き、自分に落とし込もうとしますよね。
まさに、「主体的・対話的で深い学び」を促す習慣だ、と感じました。

石川県は全国学力テスト(2021年度全国学力・学習状況調査)で日本一。教育委員会に聞くと、その石川県でトップクラスなのが、羽咋市だそうです。学力を支える日々の習慣として、学べることが多そうですね。

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