随筆文って難しい??
これまで物語文、論説文を取り上げてきましたが、今回は初めての随筆文です。
幼いころの回想など個人的な心情が描かれた物語文寄りのものと、世の中に対する考察や意見などが盛り込まれた論説文寄りのものとがありますが、このコラムでは随筆文に慣れていない人でも手に取りやすい物語文寄りのものを紹介します。
わたしは「ちびまる子ちゃん」の作者というきっかけでさくらももこさんの作品を手に取ったわけですが、そんなふうに「知っている人」の裏話として読めると楽しいと思います。
随筆文に出てくるのは筆者や、筆者の人生に登場した人物たちです。難しく考えず、他の人の人生をちょっとのぞき見するような気持ちで手に取ってみてください。
科学者たちの胸の内
1冊目は『だから、科学っておもしろい!!』というタイトルの随筆集です。
高学年の子どもたちであれば、伝記を読んだことがなくとも、歴史や文学史の勉強を通して名前を知っていることも多く、エピソードを近く感じるのではないでしょうか。
杉田玄白の回想録・牧野富太郎の人となりがわかる随筆
例えば、杉田玄白の回想録では、彼からみた江戸時代の蘭学の広まり、新しい学問への熱き思いや「解体新書」の底本となった『ターヘル・アナトミア』がどうやって彼の手元にやってきたのかなどが、本人の言葉で語られます。最晩年に書いたこの回想録は、後に福沢諭吉も読んで心を動かしていたと伝えられているそうです。
また、植物学者の牧野富太郎が93歳のときに若き日を振り返った随筆では「わたしほど一生苦しまずに愉快に研究を続けてきた人間は世間にかなり少ないようだ」と書いています。ただひたすらに植物が「好き」という気持ちで向き合い、貫き、こだわり続けた牧野富太郎の人となりが見える言葉です。
くもん出版から子ども向けに出ているシリーズなので、総ルビがついていますし、一話は短いものだと10ページほどです。書き手ごとに独立していますので気になったものだけを読むというのも良いと思います。もしこの本を読んで、科学者本人のことや、どんなことをしたのかを知りたくなったら、熱が冷めないうちにぜひアンテナを広げて調べてみてくださいね。
大人も子どもも元気がでます
2冊目は、がらっと毛色を変えて、冒頭でも取り上げたさくらももこさんの『あのころ』を紹介します。
子どもは共感でき、大人はノスタルジックな気分に浸れるエッセイ
子どもならではの勝手な言動に共感したり、学校や大人に対して感じる理不尽な気持ちを重ねたり、読むと元気が出てくるエンタメエッセイです。大人目線で言えば、こんなにも平和に「昭和」を思い出させてくれるなんて、とノスタルジックな気持ちになります。
楽しい読書の入り口に
どうしても活字に馴染めない子にはこういった楽しいお話の読み聞かせも良いと思います。漫画やアニメに劣らず、活字を読むってこんなにおもしろいのだと思わせるには、難しくなく、とにかく楽しめるような本、続きが気になるような本に触れる機会を増やすことが効果的かもしれません。
とはいえ、読書は無理強いするものではありませんし、読書をたくさんしたから国語の成績があがるというものでもありません。良い読書環境の一つとして、まずは大人が楽しく本を読んでいる姿をたくさん見せてあげてほしいと思います。