本を紹介したことはありますか?
「あなたのおすすめの本を1冊教えて」と言われたら、頭の中にどのような本を思い浮かべるでしょうか?
心に残った感動もの?
間違いなしのベストセラー?
それとも、その人が好きそうなジャンル?
今回ご紹介する本のタイトルにある「ビブリオバトル」は、自分の選んだ1冊を紹介するコミュニケーションゲームです。
物語では、ビブリオバトルについてまったく知らない人が読んでもわかるように、登場人物たちが気になることやポイントを明らかにしていってくれます。
この言葉をキャッチコピーに、誰でも開催できる本の紹介コミュニケーションゲームとして、実際の学校や図書館などで行われています。参加者同士で本を紹介し合い、もっとも読みたいと思う本を投票で決める、という流れです。
ここで選ばれたもっとも読みたいと思われた本はチャンピオンの本ということで、「チャンプ本」と呼ばれるのですが、発表した人ではなく、あくまでも本がチャンピオンなのです。発表者だけではなく、聞き手も当事者として参加できるのが楽しいところです。
ビブリオバトルの醍醐味
主人公は小学校5年生の女の子、柚希。登場人物たちもビブリオバトルは初めてです。
「バトル」というと、競う、戦う、といった攻撃的なイメージを持ってしまい、苦手な印象を持つ子もいるかもしれません。物語の中にも、司書の先生が紹介してくださるブックトークは好きだけど、「読書に勝ち負け持ち込むのいやだな」と言う子がいたり、主人公の柚希のように、もともと本を読むのは得意ではないけれど、大好きな先輩がでるなら私も頑張ろうと、本のことが動機ではなかったりと思いはそれぞれです。
主人公の柚希は先輩に振り向いてほしい、という恋愛事情もあいまって、優勝する本=チャンプ本を選ぶことに必死になります。でも、チャンプ本を選ぶことがビブリオバトルの本当の目的ではないことを感じながら、回を重ねるごとに本と向き合うことの楽しさを知っていきます。自分が紹介した本が、だれかに興味を持ってもらえたら嬉しいですよね。
本の発表の場面は、臨場感あふれ、発表する側のドキドキが伝わってきます。最初から皆が上手くいくわけはなく、失敗のエピソードを元に、それぞれの登場人物の成長がみられるところも楽しめます。本は人を育てるものだなぁ、と改めて感じました。意見が飛び交い、ぶつかることもありますが、司書の新井先生の言葉で、さりげなく場面が締まりほっとします。
本から広がる本の世界
巻末には、物語の中に登場した本のリストがついています。なんとこの中で触れられている本の数は50冊。ビブリオバトルの中で紹介されたものだけでも18冊あります。本を通して新しい知識に出会うことはよくあることですが、これだけたくさんの本に出会える物語はなかなかありません。
本の中でたっぷりと主人公たちが魅力を説明してくれているので、ビブリオバトルの聞き手になったつもりで選んでみると楽しいと思います。
読書会とブックトーク
ビブリオバトルのほかに、人に本を紹介する場として「ブックトーク」「読書会」というものもあります。
小学校の中の取り組みとして参加したことがある子は多いのではと思います。こちらは紹介者が図書館司書の先生など大人であることが多く、参加のハードルは低いものの、ビブリオバトルに比べて受け身の情報になってしまうところがありますね。
わたしも先日、初めて読書会というものを開いてみました。「本を通して人を知る」という言葉は、読書会にもあてはまり、本の話にとどまらず、それまでの読書体験についてなど話すことができました。人と話すことで言葉も思考も深まりますし、広がりのある濃い時間でした。
一言で読書といっても、様々なアプローチの仕方がありますね。1人で黙々と本を読む時間も大切ですし、色々な楽しみ方があってよいと思いますが、時には読むことの楽しさを誰かと共有してみてはどうでしょうか。